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Jun 06, 2005

レオノーレ序曲なしの『フィデリオ』

(これから新国立劇場の『フィデリオ』を見る方は,ネタばれになりますので,読まない方がいいかもしれません。)

 新国立劇場の5-6月公演は『フィデリオ』。未明のW杯予選バーレーン戦を見て寝不足の状態で初台へおもむいた。
 序曲が始まってすぐ幕が開き,出てきたのは真っ赤な洋服のレオノーラ。これがなんと舞台上で旅行カバンを開いて,ナマ着替えを始めた。男装するという設定の説明としてきわめてわかりやすいが,男装する計画があるなら最初から男の服で家を出そうなものだし,途中で男装するにしても,夫の捜索にあんなに目立つ赤い服を着ていくこともあるまい。
 それ以外は演出はまあ普通,歌手陣も指揮者もおおむね堅実で,ベートーヴェンの真面目オペラとして完結していた。
 レオノーラ役は,別に太っていたりというわけではないが,男装してもとても男には見えなかった。しかしこれは原作のせいでしかたがない。これに対し,フロレスタンは巨漢で,とても死にそうな囚人には見えなかった。

 第2幕第1場,ドン・ピッツァロがフロレスタンを殺そうとするところで,大臣到着のラッパが鳴り,ドン・ピッツァロは逃げ出す。ここはまあ,ご都合主義の解決だからやむを得ないのだが,さっさと殺してしまえばまだ間に合うのに,と思ってしまう。その前に,書類を改竄するとか,いくらでも「方法」はありそうなものなのだが。
 『フィデリオ』を見るのは6回目になるが,第2幕の途中で「レオノーレ序曲第3番」を演奏しなかったのは,たぶん初めてだ。これはマーラーの始めた「ファンサービス」なのだが,大臣到着のラッパをもう一度聞かされるのは力が抜けるから勘弁してほしいとかねがね思っていたので,今回,序曲を入れない演奏を見ることができたのは幸いであった。

 第2幕第2場は,もともと劇が終わった後の大団円でオラトリオ状態だが,今回の演出では,合唱が結婚式の服装で登場した。ここは,そもそもなぜ女性たちが急に登場するのかわからないところ(囚人が釈放になるという知らせが電話連絡網で届いたのか?)だが,結婚式にする必然性は感じられなかった。
 しかしまあ,レオノーレが再び舞台上で赤い服に着替え,最後はベートーヴェンの音楽の力で超法規的なまとまりを見せた。

 新国立劇場は,次の『蝶々夫人』で今シーズンの幕を閉じる。

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