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Jun 20, 2005

荷風――オペラとカツ丼

 荷風と西洋音楽,特にオペラの関わりは,松田良一『永井荷風 オペラの夢』(音楽之友社)に詳しいが,最近になって読んだ瀧井敬子『漱石が聞いたベートーヴェン』[中公新書](中央公論新社)にも荷風についての章があった。
 この本は文豪たちの西洋音楽体験をたどるもので,「森鴎外とオペラ」(本ではもちろん「鴎」の左側は「區」)に始まり,以下,露伴,藤村,漱石&寺田寅彦が順に扱われ,最後の章が荷風となっている。荷風の章は長くはないが,他の人と違うオペラ実践者の面が印象に残る。

 荷風がニューヨークやリヨン,パリでオペラを見たのは,今からちょうど100年前,1905年から08年だった。『オペラの夢』を読んだときも思ったのだが,荷風が見たオペラの作曲家では,ヴェルディは死んだばかりであり,プッチーニやマスカーニはばりばりの現役だった。特に『トスカ』(1900年初演)はまったくの新作だったことになる。
 古典的名作に新作として接した人々の感覚は想像もつかないが,考えてみると,荷風にとっては何でも初めてで,「現代の作品」だからどうこうという思いはなかったのだろう。

 数年前,荷風が毎日のように通った本八幡駅前の「大黒家」で,カツ丼を食べたことがある。グリンピースがのった「古典的」なカツ丼で,かなりのボリュームだった。これを死(1959年)の前日まで食べていたというから,80歳の胃袋としては並ではない。荷風の注文はいつもカツ丼と上新香,酒1合だったという。
 原則として外でパン粉の衣の揚げ物を食べないことにしている私にとって,それがこの10年で食べた唯一のカツ丼である。

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Tracked on Jun 20, 2005 at 01:32 PM

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