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Oct 12, 2005

『アリオダンテ』――バイエルンのヘンデル

 初台の『マイスタージンガー』のことを書かねばと思っているうちに,バイエルン州立歌劇場の3つめの演目,ヘンデルの『アリオダンテ』の日(9日)になってしまった。期待(今年2月22日の本欄参照)をかなり満たしてくれる上演だった。

 この時代のオペラは,アリアになると物語の進行は停止し,2行か4行ぐらいの歌詞を引き延ばして歌い,中間部を挟んでダカーポする。ソプラノ,アルト,男役のメゾソプラノ,テナー,カウンターテナーの5人の主な登場人物が交代でこれをやる。
 ヴェルディやプッチーニの豊かな感情表現を知っている者には,正直なところ,どうしても「変化に乏しい音楽」と感じてしまう。それだけに,飽きさせない演出は重要だ。

 その演出は『タンホイザー』と同じデイヴィッド・オールデンだが,舞台がカラフルなこともあって,言われなければ同じ人という感じはしない。怠惰な動きの多かった『タンホイザー』と違って,『アリオダンテ』では皆かなりのスピードで動き回る。
 あえて言えば,高いところで歌手が寝そべったり,バレエの女性が脱がされたりというのが共通している。そのバレエというのは2幕の終わりで,ヒロインのジネヴラの夢の中の場面で,夢の中のジネヴラ役のバレリーナが裸にされて,何と透明な水槽に投げ込まれてしまう。

 歌手は,2000年1月の新演出初演以来ずっとこの曲を共に歌ってきたらしく,演技も含めて見事なアンサンブルだった。女性3人はすらりと細く,見た目も吉。スコットランド王の歌手(テナー)もやせていて,これは少々貫禄不足。悪役ポリネッソの歌手は太っていて,その姿とカウンターテナーの声とが最初はなかなか結びつかなかった。

 オーケストラは三十数人で,2日の『マイスタージンガー』が終わって,他の3分の2以上は帰国したのだろう。出演者のうち,トランペットとティンパニは3幕の途中の決闘の場面しか出番がなく,フルート,ホルンも少ししか登場しない。
 ピットには他に,チェンバロ2台と低音の弦楽器テオルボがあった。チェンバロのうちの1台は,指揮者用で,ときどき短いレシタティーボを弾いていた。
 カーテンコールでは,オーケストラもたぶんほぼ全員,ステージに登場した。

 合唱も,例の合唱団員のKさんはドイツへ帰ったということなので,必要最低限の人数だけが残ったものと思っていた。ところが,そのKさんのブログによると,次の新作のリハーサルが「大人数」で行われているというので,『アリオダンテ』にはどのぐらいのメンバーが出るのだろうと思って見ていたら,合唱が歌うのはピットの左側の隅で,すべてトラ(日本人)だった。上演を見ると,なるほど歌う時間も短いし,ステージで演技をするわけでもないから,当然の処置だろう。
 バイエルン州立歌劇場の5回目の日本公演は,昨日(11日)ですべての日程を終えた(はずである)。

 プログラムに載った指揮者アイヴォー・ボルトンの写真を見て,誰かに似ているなと思っていたのだが,誰に似ているのかわからないままだった。それが,「実物」を見て,あっ,掛布(元タイガース)だ! 目つきも口元も似ていた。

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Comments

「合唱団のkさん」こと、【篠の風】です。
いつも楽しく読ませていただいております。(^_^) 今回は又、トラックバック、ありがとうございました。ご覧になったとおり、「アリオダンテ」の合唱は、日本人の方たちに任せてわれわれは10月3日にドイツに戻ってきています。

ボルトン=掛布、ですか。(^_^;) 今回の日本滞在中に、野球解説をしていた掛布氏を見たことがあります。頭が禿げ上がってしまって、昔しか知らなかったわたしには驚きでした。

Posted by: 【篠の風】 | Oct 12, 2005 at 03:29 PM

いつもコメントをありがとうございます。昨日は久々に“うけもち”しました。

というわけでミュンヘンはマイスタージンガーのみという“ヘタレ”でした。『アリオダンテ』はどうしようか迷ったものの、今まで聴いたことのない作品に手を伸ばすことをためらってしまいました。今のミュンヘンオペラはヘンデル上演がけっこう盛んですが、そこまでついていけない自分がちょっとではあります。

『タンホイザー』は10年前の印象がよくありませんでしたのでパス。それにしても10年前もヴェーヌスを歌ったマイヤーが健在なのはすばらしい。

今年は……あとシティフィルの『パルジファル』があります。

Posted by: ひだまり | Oct 12, 2005 at 10:30 PM

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