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November 2005

Nov 24, 2005

Bravi! 『アンドレア・シェニエ』

 新国立劇場の『アンドレア・シェニエ』(23日)は,この劇場での経験の中でも屈指の名演だった。主役3人がそろって美声かつ好調で,タイトルロールのテナーが太っていたことを除けば,間然するところがない。
 特に,アルバレスの代役として登場したレイフェルクス。以前キーロフ・オペラの『ボリス・ゴドゥノフ』で脇役ながら大きな存在感を示して印象的だったのに,その後何度か登場したときにはあまり冴えなかった。それが今回は,最初のときの印象が幻ではなかったことを知らしめる好演だった。もう少し年かと思ったら,意外と若々しい。
 アルローの演出は,今日は詳しくは書かないでおくが,歯切れがよく,舞台と照明も美しかった。

 この公演は,このあと,26日17時,29日18:30,2日19時,5日14時と4回ある。行こうかどうしようかと迷っている方には,おせっかいながら,行くことをお勧めしたい。上演時間は休憩30分を含めて2時間45分ほどで,体力的にも楽だし!
 今月から来月にかけては,このアルローの演出のオペラが2本(もうひとつは『ホフマン物語』の再演)同時期に上演される。

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Nov 21, 2005

すずらん通りの立ち食いソバ屋 ――神保町'70s (4)

 すずらん通りの中ほど,今は牛丼の「たつ屋」がある場所だったと思うが,昔は細長いカウンターの立ち食いソバ屋があった。看板があったという記憶はなく,したがって店名もわからない。比較的長身のおじさん一人でやっていた。

 麺にはつなぎがたくさん入り,つゆには化学調味料がかなり使われているようだったが,当時の立ち食いそばではごく普通の水準だった。
 この店がよかったのは,天ぷらの種類がいろいろあって,自由に選べることだった。普通の立ち食いと同じく,単に「天ぷらそば」といえばもちろんかき揚げが出てくるが,ほかに,ナス,ピーマン,タマネギ,レンコン,シュンギク,ゴボウ,ちくわ,エビ,イカなどがあった。
 私は,当時も昼に立ち食いというのはしなかったが,夕方,演奏会やその他の用事で出かける前によくこの店に行った。顔なじみになると,「今揚げたては,ナスとちくわ」などと教えてくれた。
 ふつうの(立ち食いでない)そば屋にも天ぷらのネタを自由に選べるシステムがあるといいのに,と思う。

 立ち食いソバ界の雄・小諸そばチェーンは,当時,もっと東の方にはすでにあって,特に小川町交差点そばの店はかなり初期の店だと思うが,神保町付近にはまだなかった。このあたりでは,駿河台下交差点脇の店がいちばん古い。最近では,神保町2丁目の白山通り沿いにあって孤軍奮闘していた「二八そば」が小諸そばに化けた。
 ただし,小諸そばは3,4年前に椅子が設置され,純粋の「立ち食い」ではなくなった。

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Nov 19, 2005

さまよえる『オランダ人』

 あわただしい日が続いて書けないでいるうちに旧聞になってしまったが,今月上旬,二期会がハノーファー歌劇場と共同制作した『さまよえるオランダ人』があり,5日(土)に出かけた。A・Bキャスト各2日ずつの公演のうち,Aキャストの2日目である。休憩なしの全幕連続版だった。
 演出と美術はベルリン在住の渡辺和子という人で,舞台装置の色遣いがちょっとおもしろいが,総じて珍妙かつ混沌。第2幕の舞台は精神病院のつもりのようだが,よくわからず。オランダ人の肖像が絵でなく立体像なのは初めてだった。最後は救済されない。いろいろ未整理な感じで,来年2月のハノーファー公演のための試演という感じだった。
 でも,これはまあ「想定内」で新しい演出はこんなものという気がしたが,歌手,特にオランダ人(最初はなかなかいい声だと思ったのに,すぐ失速)とダーラントが生気がないのにはがっかりした。カーテンコールでは少数ながら「ブー」も飛んだ。
 去年,初台でサロメをやっていたエヴァ・ヨハンソンがゼンタを歌い,一人でがんばっていた。
 その後『東京新聞』に出た評によると,AキャストとBキャストでは演出面でずいぶん違うところがあり,Bキャストの方がより練られたものだったという。

 収穫はエド・デ・ワールトの指揮。6月の読響で『リング』の「オーケストラル・アドベンチャー」を聞いたのに続いてのワグナーで,直球勝負の骨太ワグナーが『オランダ人』という曲に合っていて快かった。デ・ワールトは元々オーボエ吹きで,オランダ管楽合奏団の主宰者として最初に名前を覚えたが,六十代半ばに達したいま,指揮者として円熟の活躍を見せている。
 オーボエ吹き出身の指揮者としては,ルドルフ・ケンペ以来の大家となった。

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Nov 09, 2005

混んだ電車――寺田寅彦の観察

 朝,地下鉄に乗ろうとしてぎっしりいっぱいで,次の電車にしようかと迷ったりすると,決まって思い出すのが寺田寅彦の「電車の混雑について」である。
 この随筆では,東京の市電(路面電車)の乗客の行動を観察した結果として,「人は混んだ電車に乗りたがる」「混んだ電車の次にはすいた電車が来る」…といった「法則」が語られる。

 寺田が観察をしたのがどこの停留所だったのかは長年意識したことがなかったが,少し前にふと思い立ってあらためて原文を見たら,これが神保町の停留所だった。時は1922(大正11)年6月18日,作者44歳のときである。白山通りを行く市電だから,その子孫が地下鉄三田線ということになる。
 市電の場合は,電車の間隔が詰まってじゅずつなぎになったりすることもあるのに対して,現在の鉄道は混雑のためにダイヤが大きく乱れることはないし,乗り入れなどによる始発駅の違いが混雑のバラツキの原因になっていることも多く,事情の違いは大きいが,混んだ電車に乗りたがる心理などは変わっていない。

 いま,寺田の随筆はネット上の「青空文庫」で容易に見ることができる。

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Nov 05, 2005

天龍 ――神保町'70s (3)

 いま神保町パークタワーの東側,駐車場の出口のあるあたりの位置に,昔「天龍」というラーメン屋があった。おやじさん一人でやっているカウンター8席ぐらいの店で,メニューは醤油味のラーメン・チャーシューめんと,それぞれの大盛のみ。
 壁に貼ってあるカレンダーがやけに土日を強調しているなと思ったら,中央競馬会(JRAという名はまだなかった)のカレンダーだった。愛想のないおやじだが,常連客と競馬の話をすることはあった。

 麺は太め,スープは,その後ほとんど経験がないくらい濃厚で脂ぎっていた。いまラーメンは,あっさりから濃厚へ少し回帰しているような気がするが,それも天龍のスープに比べたら比較にならないくらいあっさりしたものである。カウンターには大きなGABANの黒コショウの缶があり,おやじさんは客に,これをたくさん入れることを非常に強く求めるのだった。
 客の大部分は比較的若い男性で,たまに女性客が来ると妙に意固地になって,「うちのは脂っこいよ」といってなるべく追い返そうとする。めげずに「いえ,大丈夫です」と言って座った女性だけが,きわめて強力なコショウ指導を経て食べることができた。
 80年代の前半のうちに閉店したように思う。

 当時,半チャンラーメンで有名な「さぶちゃん」はもちろんあったが,本当にラーメンだけの店は,ほかに「ぴか一」ぐらいだったように思う。
 ぴか一は,最初小川町3丁目の偶数番地(靖国通り北側)にあったが,その後小川町3-9(今は「おっち」というカウンターの中華のある場所)に移転した。澄んだ醤油味スープの伝統的な東京のラーメンだった。開店はいつも1時,開店前に行列ができていた。よく似た顔の兄妹がやっていた。

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