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Jan 28, 2006

ゲルギエフの圧縮リング 後半

 ゲルギエフの『ニーベルンクの指輪』の後半は,上演自体よりも,上野の雪景色で記憶に残るかもしれない。『ジークフリート』のあった1月21日は,ほとんど一日中雪が降り,古い防寒靴をはいて出かけた。長年上野に通っているが,東京文化会館の中から雪景色を見るのは初めてだった。最初の休憩のときはまだ明るかったが,2度目の休憩のときはかなり暗く幻想的で,舞台上の原色の世界と好対照だった。0601ueno-snow1


 ジークフリートは「怖れ」を知らないが,オーケストラは疲れというものを知らず,2日続きの超大曲を大音響で奏でた。前の来日の時も感じたが,ここのオーケストラは,木管,特にクラリネットとオーボエの音が異様に大きい。しかも,力が有り余っているとみえて,休憩の時にモーツァルトのクラリネット協奏曲などを聞かせてくれた。
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 全体に荒っぽいのは前半と同じだが,後半は大部分が既知のモチーフばかりだし,耳が慣らされたために,思ったより疲れなかった。歌手は,『ジークフリート』のジークフリートが若々しく,やんちゃ坊主という感じで役に合っていた。さすらい人は序夜と同じニキーチンで,序夜より良く,『ワルキューレ』のヴォータンよりはるかに良かった。『神々のたそがれ』の歌手は,総じて小粒,ブリュンヒルデは『ジークフリート』の日の人の方がましだった。
 舞台装置は,巨大な石像4つを中心としたもので,これ自体は特にいいとも悪いとも思わなかった。だいたい,ワグナーの舞台装置は,どんな形でもそれなりのやり方はあると思う。
 しかし,人の動きについては,舞台空間の「高さ」が生かされていなくて単調だった。小鳥さえ,のそのそ歩いて登場した。そして,もっとも問題だと思ったのは照明だった。ほとんど原色でしかも突然変わり,その割に炎があまり燃えなくて,最後までなじめなかった。

 不満足なところが多い今回のリングだったが,それでもナマで見てよかったと思ったのは,結局はワグナーの音楽の力によるところが大きい。リングの作曲は,『ジークフリート』の途中で10年中断し,この間に『トリスタンとイゾルデ』『マイスタージンガー』が生まれた。リング後半の長大な2曲が,ずっと同じモチーフを使っていながら音楽の表情が多彩で飽きさせないのは,この10年の間の円熟の成果だろう。

 見たオペラの指揮者をカウントしてみたところ,前回のキーロフオペラ来日の時点でゲルギエフがトップになっていたのだが,今回さらに伸びて17回となり,2位のサヴァリッシュ,若杉弘(10回)に大きく差をつけた。サヴァリッシュはもう増えないだろうから,しばらくは独走が続く。
   (1/29 写真を追加)

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