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Mar 12, 2006

一人文化の日 (2)――源氏物語絵巻

 交通博物館を出て,古い洋食の店・松栄亭で遅い昼食とする。食べたのは,いかにも手作りの不揃いなパン粉に包まれたカキフライ。貼り紙のメニューには「3月末日までです」と注記がある。
 万世橋駅の時代から続く旧連雀町の古い店のたたずまいを眺めてから,地下鉄の駅へ向かう。

 この日のもうひとつの目的地は,「よみがえる源氏物語絵巻」展を開催中の世田谷の五島美術館だった。下車駅は大井町線の上野毛。駅の真ん前は環八の喧噪だが,それを渡って数十メートル入ると静かなお屋敷町で,樹木も多い。
 美術館に着くと,入り口に「ただいま入場は40分待ちです」という貼り紙が出ている。切符を買うのに並ぶわけではなく,展示室内の人数を調整しているのである。どうしようかと思ったが,平日に来ることはもうできないだろうし,ほどなく「30分待ち」に貼り替えられたのをきっかけに,やっぱり切符を買って並ぶことにした。

 25分ぐらいで中へ入れた。入れたが,ちゃんと見るには順序通り1列で行くしかなく,きわめてゆっくりした歩みで進む。
 展示は,1)絵巻の現在の姿のディジタル技術による複写,2)昭和30年代の復元模写,3)このほど完成した平成の復元模写の3種を,各面ごとに並べて対比できるようにしたものがメインである。復元模写というのは書かれた当時の色合いを推定して描いたもので,平成の復元模写にあたっては,すっかり退色して見えなくなっていた模様を,蛍光X線分析で明らかにし,また使用している絵の具を分析して元の色を推定するなどしたという。ただし,あくまで「模写」,つまり日本画家が筆で描いたものであり,CGではない。

 混んでいてゆっくり進んだおかげで,解説を読み,じっくり見比べることができた。
 全部で19面のうち,「使用前・使用後」がいちばん大きく違うのは,最初の「蓬生」である。本物の現状は大部分が泥の海のような状態だが,中央部は実は藤の花と蓬の庭で,左の源氏と惟光は涼しげな夏の装束だった。それだけに,右上の末摘花の家のあばら屋ぶりが目立つわけである。
 その他の絵も,青系統の方が退色している度合いが大きく,それを復元したものは非常にさわやかな印象である。
 ほかにも,江戸時代の古模本,剥落模本(剥落した状態を模写したもの),木版刷りによる複製などがあり,1室だけの展示だが,充実した内容だった。

 五島美術館に前に来たのは2000年秋,やはり源氏物語絵巻で,徳川美術館と五島美術館に分かれて所蔵されているすべてが一度に見られる展示のときだった。
 このとき売店で買い物をしたら,お釣りに2000円札が入っていた。この年の7月に発行された2000円札が「実用」に供されるのを初めて体験した。しかしよく考えたら,2000円札の図柄は源氏物語絵巻で,しかもこの五島美術館所蔵の「鈴虫二」であり,これはいわば「ご当地もの」なのだった。

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