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Apr 11, 2006

ホール・オペラ『トゥーランドット』――「リューの死」のあと

 さて,3日に「速報」だけ書いたホール・オペラ『トゥーランドット』だが,演奏もなかなかよかった。
 サントリー・ホールのこのシリーズは89年ごろ始まり,少しずつ形を変えながら続いている。最初はほぼ純粋に「演奏会形式」で,歌手は譜面台を立てて普通の服装で歌っていたが,93年の『ラ・ボエーム』あたりからしだいに「オペラ化」していったように思う。
 今回は,オーケストラが舞台にのっているのと,合唱がオルガン下の席で動かないのを除いては,衣装・照明・簡単な舞台装置ありの「ほとんどオペラ」である。合唱も人民服のような衣装を着ていた。ソリストの衣装はほぼ伝統的。
 合唱で唯一動いたのは,第1幕で「夕焼け小焼け」みたいな歌を歌う児童合唱で,ハメリンの笛吹きのように,アルト・サックス(この楽器用法はもちろん原曲通り)に先導されて舞台を横切っていった。

 タイトルロールのアンドレア・グルーバーは,かつてワグナー歌手がこの役を歌ったときのような迫力・威圧感はなかったが,筋の通った声で,「人間的」なトゥーランドットだった。ラ・スコーラは意外なことにカラフを歌うのは初めてだそうで,姿よりも若々しい声は健在だった。
 ただし,舞台上のオーケストラの前で歌う歌手にとって,この曲の壮大なオーケストレーションに対抗するのは難しく,歌が聞こえにくい箇所もあった。指揮者・オケもずいぶん気を遣っていたようだが,やたらと抑えてはつまらないし,まあやむを得ないところだろう。2日目・3日目は少し状況が変わったかもしれない。
 リューのスヴェトラ・ヴァシーレヴァは姿も美しく,「儲け役」であるこの役できちんと儲けていた。

 いつも思うのだが,トゥーランドットの歌う歌にはたいしたメロディがない。オーケストラがいろいろやっているから曲になっているが,伴奏無しで歌ったとすると何の曲だかわからないような非個性的な音の動きである。プッチーニは,完成できなかった最終場面で,トゥーランドットをもっと大きく変身させる計画だったのでは,と想像したりする。
 今回のホール・オペラでは,プッチーニ自身が完成させた「リューの死」までとそれ以後とで衣装を替えるなど視覚的に区別していた。これは確かに普通のオペラ上演ではやりにくいことで,ホール・オペラならではである。しかし,見る方にとっては「成立事情」を表現してくれてもたいしてありがたくはない。

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Tracked on Apr 11, 2006 at 11:25 PM

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