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July 2006

Jul 31, 2006

纏寿司 ――神保町'70s (10)

 靖国通りとさくら通りの間にある小路に,かつては小さな飲食店がいくつかあった。そのひとつが,纏(まとい)寿司である。今はさくら通りとの間には駐車場のあっけらかんとした空間が広がり,さくら通りから纏寿司のあったあたりが見えているが,ここには昔閉館した東洋キネマの由緒ある建物がだいぶ後まで残っていた。

 纏寿司は,痩身のきっぷのいいおやじさんがやっていて,おかみさんのほかに美人の娘さんが店に出ていた。夜に入ったことは2,3回しかないが,おやじさんが仕事中酒を飲んで娘さんにたしなめられていた記憶がある。
 昼飯は「ねぎま」「まぐろの刺身」「鰺のたたき」の3種で,私はこの店の昼食で,ねぎまという言葉を初めて知った。まぐろと鰺には小さいねぎまがついたが,大きいねぎまに替えて少し豪華版にする人も多かった。いずれもしじみ汁がつき,これはおかわりができた。ただし,最初にしじみがたっぷり入っているので,当然,おかわりはほとんど汁だけだった。まぐろはわさび醤油にあらかじめつけておくやり方だった。昼食としてはやや高めの値段だったが,娘さんの人気もあってか,いつも混んでいた。

 その後,纏寿司は,日本教育会館の地下に店を出し,こちらもかなり繁盛していた。元の店と両方やっていた時期もあったような気がするが,あったとしても短い間で,元の店は80年代前半ぐらいに閉店した。おやじさんが倒れたという噂を聞いたこともある。教育会館の店は90年代まであった。
 いま,かつての纏寿司に似たねぎまや刺身の昼食を出すのは,さくら通りより1本南の道にある「ひげ勘」である。纏寿司とのつながりは尋ねたことがない。

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Jul 04, 2006

三十年一日 ――神保町'70s (9)

 神保町には長い歴史を持つ飲食店が多いが,その多くは,改装や建て替えなどいろいろな変転を経ている。そんな中で,私が知っている70年代前半以降で見た場合,もっとも雰囲気が変わっていないのは,花家,スヰートポーズ,それにキッチン南海である。

 「キッチン南海」は,一時はずいぶんたくさんの店があったが,前世紀の90年代ごろだいぶ少なくなり,今はこの近くではすずらん通り(神保町1-5)と小川町(2-12あたり)の店が「健在」である。すずらん通りの店は,今も昔も通り随一の「行列の店」で,1時過ぎまで行列が絶えることがない。焦げ茶色の外装も,縦書きで黄色く「キッチン」,緑で「南海」と書かれたドアも,内装も,手入れはしているようだが,昔のままである。

 その斜め向かいの「スヰートポーズ」も「南海」に次ぐ行列の店である。4人掛けのテーブル(左奥のみ2人用)が並ぶ店内は昔より少し明るくなったような気がするが,黄色の看板も,ショーウインドウも,ほとんど変わっていない。メニューも(値段以外)すべて昔と同じで,四角い筒のような独特の形の餃子が小皿8個,中皿12個,大皿16個,定食には(中華スープでなく)ワカメの味噌汁と白菜の漬け物がつく。私は「チュウテイ(中皿定食),小ライス」を食べることが多い。

 その裏の路地にある「花家」は,門を開け,玄関に入って靴を脱ぎ,2階の座敷へ上がる古典的な和食の店で,1階の玄関脇の別の扉を開けるとカウンター席があり,1人2人だったらこちらがいい。この店は,建物や内装はもちろん,驚くべきことに女将さんを含む3人の女性も,三十年一日である。
 カウンター脇に,夜の客のボトルが置かれている。昔はウィスキーだけだったのが,今は大部分が焼酎のボトルになったのが,小さな変化である。

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