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Dec 07, 2007

ショルティの『指輪』とジョン・カルショーの手記

 ショルティ指揮,ウィーン・フィルによる『ニーベルングの指輪』の録音(1958-65)のプロデューサー,ジョン・カルショーの手記『ニーベルングの指輪――リング・リザウンディング』(学研)を,寸暇を惜しんで読んだ。読むのを中断するのが惜しくて,最後はJR東京近郊区間の「大回り乗車」をして電車内で読んだ。
 同じ本の翻訳は,昔,音楽之友社から出ていたが,今回のはそれとは別の訳である(旧訳の訳者が序文を書いているのもおもしろい)。旧訳は長いこと絶版になっていて,何度か神保町の古賀書店(音楽書専門の古書店)で聞いてみたが,手に入らなかった。
 録音開始のときカルショーは34歳,準備を始めたときは30そこそこだった。この大プロジェクトを,こんな「若僧」にやらせてしまうデッカの太っ腹は見事というほかはない。ただ,『指輪』全部を録音するかどうかは最初はまったくわからなかったようだが。

 録音は1958年の『ラインの黄金』で始まった。戦後のウィーン国立歌劇場は,それまで『指輪』は仮小屋での『ワルキューレ』以外はやったことがなくて,ウィーンフィルの戦後のメンバーはこの録音が『ラインの黄金』初体験だったというのを初めて知った。考えてみれば,戦後劇場を再開したのがその3年前の1955年だったから,それも当然なのだが(戦後初めての『指輪』はその直後に始まったカラヤンによるものだとのこと)。

 日本でこのLPがセットで出たのは1968年だった。そのころの私はワグナーはいくつかの序曲・前奏曲以外何も知らなかったが,この豪華なセットが大きな話題になったのはかろうじて覚えている。たしか定価は45,000円,当時の初任給を大きく上回る額で,学生が買うなど考えられなかった。
 私が買ったのは,70年代後半に定価30,000円で発売になったときである。「ライトモチーフ集」3枚がついて,だぶん22枚組だった。解説書(歌詞対訳入り)の厚さは1cm以上もあり,友人と「これはリブレットじゃなくてリブロだね」などという話をした。
 その後,前世紀末ごろに輸入盤CDで買い直したときは2万円ぐらいだった。感覚的には,最初のLPの10分の1以下の価格である。
 今や『指輪』全曲の録音は十何種類もあるが,この最初のものが今も「現役」であり,しかもしばしば最良のものとされているのは,草葉の陰のカルショーも誇らしく思っていることだろう。

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