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Jun 04, 2008

バイエルン国立歌劇場1974 (3)――70/80年代の外来オペラ

承前
 徹夜して切符を買った『ワルキューレ』は『ばらの騎士』の2日後だった。指揮は当時51歳のサヴァリッシュ(音楽総監督),演出はギュンター・レンネルト(総監督)。こんどは5時開演なので,やむを得ず午後は休暇とした。
 イングリッド・ビョーナー死去のときにも書いたが(→参照),歌手は,ジェームズ・キング(ジークムント),カール・リッダーブッシュ(フンディング),テオ・アダム(ヴォータン),ギネス・ジョーンズ(ジークリンデ),ビョーナー(ブリュンヒルデ),ブリギッテ・ファッスベンダー(フリッカ)という音楽祭並みの豪華メンバーだった。予定ではブリュンヒルデは,当時の私でも名前を知っているビルギット・ニルソンだった(ビョーナーとのダブルキャスト)が,このときニルソンは結局来日しなかった。
 ピットの中は,たぶんワグナーの指定通りの人数(ヴァイオリン8プルトずつ)のオーケストラであふれ,後ろの仕切りを外して,ハープをちゃんと6台並べていたと思う。後に知り合いになる日本人ヴィオラ奏者I氏はすでに在籍していた。

 当時,オペラで字幕は出ない。家庭用ビデオもまだなかったので,「名曲解説全集」などを読んで「予習」する必要があった。会場にはレコード(CDでなくLP)に付属の対訳書を持ってきている人がたくさんいた。
 演奏・歌唱についてはこれももはやほとんど覚えていないが,音楽の力にもっとも動かされたのは,第3幕,ブリュンヒルデがジークリンデに,あなたは高貴なるヴェルズング族の後裔を胎内に宿していると告げる場面で,「英雄ジークフリートの動機」が登場するところである。「ジークフリートの葬送行進曲」の中のメロディとして以前からなじみ深かったので,旧知の友人に会ったような感じがした。ここは,4夜にわたる『ニーベルンクの指輪』の中でこの動機が初めて鳴り響くところなので,まったくの本末転倒ではあるが。
 この贅沢すぎる『ばらの騎士』『ワルキューレ』に圧倒されたことが,私のオペラ史の始まりになった。
  (この項終わり)

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Comments

 すごい。豪華すぎる配役です。88年のミュンヘンも
アバドの「ランスへの旅」も強力な布陣でしたけど。

 名前を聞いただけで、ああ、あの声、という歌手さんも
少なくなりました。

Posted by: リンデ | Jun 05, 2008 at 12:58 PM

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