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Oct 18, 2008

劇中劇版『トゥーランドット』

 新国立劇場(初台)の新シーズンの幕開けは,新制作の『トゥーランドット』だった。演出家ヘニング・ブロックハウスも指揮者アントネッロ・アッレマンディも藤原オペラなどで見たことがあるが,初台には初登場である。
 歌手はそろって好調。タイトルロールのイレーネ・テオリンという人は超越的な存在ではない「普通の美人」を好演した。

 今回の演出は,「外枠」を作曲当時の1920年代に設定し,オペラはその劇中劇としたのが新機軸である。舞台は「外枠」の無言劇(けっこう長かった)で始まり,その中で人々が劇のための扮装になっていき,オペラは最初から劇中劇として演じられる。中央の舞台の屋根にはバンダ(管楽器の別働隊)がずっと座りっぱなしである。
 しかし,すべてを劇中劇にするわけではなく,第3幕のリューの死まで,すなわち作曲者が自分で仕上げたところまでで終わりになる,というのがミソで,続きのアルファーノが補筆して完成させた部分は「外枠」の世界に戻って,あるいは戻りながらの上演だった。ティムール(の役を演じた人)が舞台下手で居眠りをしていたりして,外枠のリアリティを確保しようとしていた。

 リューの死までとそれ以降を見た目にはっきりわかる区別をする上演は,2006年のホールオペラ(→参照)でもあったが,最後の場面を外枠に追い出すことによって区別の必然性を主張したわけである。
 おもしろいアイディアだし,劇中劇が相対的に軽くなって,おとぎ話という要素が強い上演になったのはおもしろかった。しかし,広場の雑踏の中で,市民としてのトゥーランドット(役の人)が「彼の名は…愛」などと叫び,人々が大合唱で祝福するというのは,大いに無理がある。ここは,お祭りの中でのことで,歌詞にはあまりリアリティを持たせない,ということなのだろうか。

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Comments

テオリンが新国でトゥーランドットを歌うというのを知ったのは、10月に入ってからだったかなと思います。

トゥーランドットとイゾルデ(あるいはブリュンヒルデ)と言うと、ビルギット・ニルソンを思い出しますが、あるいはニルソンのような声の持ち主なのかも知れません。テオリンは、北欧スウェーデン生まれですし。

Posted by: HIDAMARI | Oct 23, 2008 at 10:40 PM

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