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Nov 24, 2008

『<名画で読み解く> ハプスブルク家 12の物語』

 前に買ってあった中野京子『<名画で読み解く> ハプスブルク家 12の物語』(光文社新書)を,ようやく読み終えた。「ようやく」というのは,読むのに苦労したわけではなく,自分が読む前に貸した身近な人間から返ってくるのに時間がかかっただけで,読み始めたらおもしろくて,一気に読んでしまった。

 デューラー,ティツィアーノ,エル・グレコ,ベラスケスからマネに至る12の名画を軸にして,高校の世界史にも出てくるスペインの築いた「日の没することのない帝国」と無敵艦隊,マリア・テレジア,マリー・アントワネット,第一次世界大戦の引き金になったサラエヴォでのオーストリア皇太子夫妻暗殺といった人物・事件と,オペラ『ドン・カルロ』,ミュージカル『エリザベート』が,双頭の鷲を紋章とするハプスブルクという1本の線でつながる。
 絵と見比べることによってより生々しく迫ってくるのは,ハプスブルク伯ルドルフが選帝侯によって棚ぼたで神聖ローマ帝国皇帝に選ばれて以来の650年の歴史は,血みどろの戦いと政略結婚・血族結婚の歴史だったことである。著者はこの650年という長さを,時代的に重なる徳川幕府の265年,ロマノフ王朝の300年と比較して「類のない長命」としている。そういえば,中国でも,漢が(前漢・後漢合わせて)約400年というのが最長である。
 それに比べると,神保町からも近い所に住むやんごとなきファミリーの「万世一系」1500年以上というのは,ある時期から自ら実質支配をしていなかったから実現した「安定」と言えそうだ。一応支配者だった6~8世紀ごろの「血みどろ度」「血族結婚度」はハプスブルク家に近かったと思う。

 『ドン・カルロ』のフェリペ2世は孤独な老王だが,実際にはエリザベッタと結婚したとき32歳で,その前にはイングランドのエリザベス1世との縁組みを画策したこともあったという。仮にこれが実現していれば,オペラの世界では『ロベルト・デヴェリュー』はなかったし,『アンナ・ボレーナ』『マリア・ストゥアルダ』などもかなり違う形をしていたことだろう。

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