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May 17, 2009

海辺のクラリネット

 私の中学は,払い下げになった旧日本海軍の施設をそのまま使っていて,目の前は岸壁だった。湾の向こうには,引退した南極観測船「宗谷」が停まっていたりした(→参照)。
 吹奏楽部は,秋の運動会で行進演奏をするので,夏には岸壁沿いの道でその練習をした。夏休み中の行進の練習のときのことだった。休憩時間に,当時ホームランの量産を始めていた王貞治の一本足打法の話になり,1年上のクラリネット奏者がその真似をした。彼はバットの代わりにクラリネットを持って,スイングした。もちろん,フルスイングしたわけではなく,彼としてはほんの形だけのつもりだったと思う。しかし,あろうことか,クラリネットの上半分が離れて飛んで,海に飛び込んでしまったのである。
 木の楽器だから浮くかと思ったが浮いてこない。学校の周辺の海に入るのは厳禁されていたが,潜りに自信のある者が2人ほど飛び込んで探した。海水パンツやメガネを用意してからなので,たぶん翌日のことだったのだろう。しかし,軍艦が使っていた岸壁だから海は深く,しかも濁っていて,結局見つからなかった。

 その1年後,学校は海のそばから丘の上に移転した。旧校舎での最後の練習の日,トランペット奏者が海に向かって別れのファンファーレを吹いた。

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