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Jun 13, 2009

一人でしゃべる

 90年代後半だったと思うが,個室の寝台車に乗ったときのこと,隣の部屋の人がドアを開けたまま携帯電話で大声でしゃべっていた。ドアを閉めてくれればいいのにと思ったが,少ししてドアを閉めてからもけっこううるさかった。考えてみると,個室で声を出すという状況は携帯電話出現前はほとんどなかったわけだから,隣室との間の壁の防音性はあまり考慮されていないのだろう。
 かつては,路上や駅などで,相手の姿がないのに一人で何かしゃべっているというのは,奇異な光景だった。もちろん,「あっ,しまった」「どうしようかな」といった言葉を思わず発するのは自然なことだが,ある程度以上の長さの言葉を声に出すという状況は考えにくかった。

 子供のころ,しばしばラジオのニュースらしいものをしゃべりながら歩いている男が町内にいた。いつも「JOAK,東京第1放送です」というコールサインで一区切りとなる。近所のおばさんたちは,あの人はNHKの試験に落ちたらしいと噂していた。
 もう10年ぐらい前だが,駅のホームで突然「そのとき捜査本部では」という声が聞こえた。思わず振り返ると,ベンチで文庫本を読んでいたおじさんが発した声だった。少しの間近くにいたが,発したのはその一声だけだった(実際にはその先のフレーズも続いたがすぐフェイドアウトした)。よほど興が乗ってきていたに違いない。かつて読書というのは音読だったという歴史(→参照)を思い出した。

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