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Jul 11, 2009

スカラ座1981 (3)――70/80年代の外来オペラ

承前
 続いては,『シモン・ボッカネグラ』(東京文化会館)を9月10日に見た。この公演は,今までに見たオペラの中で3本の指に入る名演である。昔話の常で,どうすごかったのかを具体的に語ることができないのがもどかしいが,歌と演技,オーケストラ,合唱,演出,舞台装置,衣装など,オペラを構成するすべての要素がかみ合って,単に各要素を足し合わせたものの何倍もの大きさの総合力を発揮していた。
 このオペラのプロローグは,ジェノヴァの統領に平民のシモーネ(シモン)が選ばれる前夜の話で,『トスカ』同様,その日付が特定されている(日本でいえば鎌倉幕府滅亡のころである)。続く第1幕は,突然その25年後となり,対照的に昼の明るい舞台になる。その背景には,レコードやLD(後にはCDやDVD)のジャケットでおなじみの大きな舟の帆があるのだが,文化会館の舞台の高さが足りなかったようで,先端が少し折りたたまれていた。
 最大の見せ場は第1幕後半で,緊迫したやりとりが続く中,群衆が押し寄せてくる。最後にパオロが自分に呪いをかけることになる場面まで,ドラマは大きなうねりを繰り返しながら盛り上がる。
 主要な歌手カプチルリ,ギャウロフ(共に当時五十代初め),フレーニの3人は,この名演出の最初から歌ってきた名コンビだった。今世紀になってから,カプチルリとギャウロフは他界してしまった(→参照)。
 『シモン・ボッカネグラ』の上演の機会は多くない。このスカラ座公演のあと今日までに3回(うち,演奏会形式が1回;→参照)見ているが,そのたびに,スカラ座公演の忘れていた場面の断片が蘇ってきて,あらためて最初の印象の強烈さを思った。

 続いて11日には,アッバード指揮のヴェルディ「レクイエム」の演奏会(東京文化会館)に出かけた。この曲も生で聴くのは初めてだった。
 ステージに出てきた合唱団を見て,意外と少ないと感じた。たぶん80人ぐらいだったのだと思う。しかし,そのフォルテッシモは強力で,しかも人海戦術ではないだけに澄んだ力強さがあり,しなやかだった。一方で,ピアニッシモは表情豊かで充実した響きを聞かせてくれた。
 スカラ座のオーケストラも生気にあふれていて,合唱と同じくピアニッシモの充実ぶりが印象的だった。ヴェルディのオーケストレーションは,管楽器の弱音の出しにくい音域をピアニッシモで使うなど,ちょっと独特な点があるが,そこはもう自家薬籠中のもので,「こうやるもんだ」ということを示してくれた。
 ソリストは,それぞれ複数の名が予告されていたうちのだれだったかという記録がない。記憶では,トモワ=シントウ,ヴァレンティーニ=テッラーニ,ルケッティ,ギャウロフだったのだが,ギャウロフだと2日連続ということになり,本当だったのか自信がない。ここでひときわ素晴らしかったヴァレンティーニ=テッラーニには,ロジーナとして再会することになる。
                (この項つづく

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Comments

 カプさまのオペラ。藤原の道化師だけでも、
生前、見られてよかったです。
 アンコールにこたえての2回の「口上」は
忘れられません。

Posted by: リンデ | Jul 11, 2009 at 04:22 PM

>リンデ様 いつもコメントありがとうございます。カプチルリは83年の「オペラ・ガラ・コンサート」の『アンドレラ・シェニエ』のアリアが素晴らしかった。やはり2回やりました。

Posted by: 家主IZK | Jul 13, 2009 at 08:31 AM

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