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Aug 07, 2009

森まゆみ『女三人のシベリア鉄道』

 森まゆみ『女三人のシベリア鉄道』(集英社)を読んだ。「女三人」というのは,与謝野晶子(1912年乗車,当時33歳),宮本百合子(1927年,28歳),林芙美子(1931年,27歳)の3人である。小さめの文字で 350ページとかなりのボリュームがあるが,それもそのはず,著者の2006年のシベリア鉄道の旅を軸に「女三人」の旅を重ね合わせて,計4人分の旅行記が詰まっている。
 森まゆみ氏というと,「谷根千」(東京の谷中・根津・千駄木)の雑誌や,東京の下町の食べ物についてのエッセイなどになじんでいたが,「本業」のノンフィクションの著作はあまり読んでいなかった。
 国内でさえ女性の一人旅は普通ではなかった時代に,シベリア鉄道でヨーロッパまで行ってしまう女性のたくましさにつき動かされるようにして,著者はこの本を書き始めた。特に多くのスペースをさいているのは与謝野晶子についてである。与謝野がパリに行った夫・与謝野寛を追ってシベリア鉄道に乗ったというのは何かで読んだことがあったが,それに至るまでのこと,たとえば他の女から寛を略奪するようにして結婚したこと,13人の子を産んだことなどは初めて知った。若い恋人のように寛を想う短歌がある一方で,旅で出会った男に心を動かされたりもする。他の2人と違って短歌という表現形式を持っているのが,大きな強みになっている。

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Comments

 与謝野訳の源氏物語は、私がはじめて通読した
「源氏」です。歌人ならではの鋭い「触覚」が
谷崎訳になじめない私は大好きでした。

Posted by: リンデ | Aug 07, 2009 at 05:20 PM

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» 『いつかモイカ河の橋の上で』 中野吉宏 著 (第三書館) [エルミタージュ図書館]
 副題は「会社を休んで59日間 地球一周」とある。  大学を出てフリーターをしながらお金を貯め小さな会社をつくった30代後半の男。一生懸命働くものの不景気も手伝い気持ちは空回り。ちょっとした出来事がきっかけとなり、突然、仕事を放り出し、大学時代以来2回目の海外旅行に出る。出発は大阪港からフェリーで上海へ。そこから鉄路シベリアを経由しロンドン。さらにアメリカも東海岸から西海岸まで大陸横断鉄道で移動し、成田へ。仕上げは「ムーンライトながら」だ。  道程も、日々、仕事に追われるサラリーマンにとっては魅... [Read More]

Tracked on Aug 11, 2009 at 09:29 AM

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