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Nov 19, 2009

スカラ座1981 (4)――70/80年代の外来オペラ

承前――4か月も間が開いてしまいましたが)
 オペラ4曲のうち,「前半」の2曲は前記の9月10日の公演で終わり,15日から「後半」の2曲が始まった。私が見たのはまず9月19日の『ラ・ボエーム』(東京文化会館)である。
 クライバーはこのときも,あいさつもそこそこに振り始め,いきなりパリの屋根裏部屋に引っ張り込む。ゼッフィレッリのこの名舞台は,第2幕の2階建て舞台がよく話題になったが,第3幕の雪景色など,他の幕の舞台の美しさも特筆ものだった。
 第2幕では,日本で調達したエキストラも加えて,400人近い人数が舞台に乗った。幅はあるが奥行きの短い上野の舞台によく乗ったものである。そこではミミも4人の若者も群衆の中の一人だった。群衆がまったく動きを止めたのはムゼッタのワルツのときで,濃いピンクの衣装が鮮やかなムゼッタ(マルゲリータ・グリエルミ)が,この儲け役できちんと儲けた。大詰めで,群衆をかきわけるようにして軍楽隊がパレードしてくるところで,音楽も,舞台上の熱気も,聴衆の興奮も頂点に達した。
 第3幕は対照的に静かな夜明け前。後から思うと,街灯,酒場から漏れる光,雪,夜明けと精妙に変化する照明が視覚上の主役だった。紗幕というものの存在を意識したのも初めてだった。
 主役2人は,その後何度か接することになるフレーニとドヴォルスキーのコンビで,フレーニは遠目にはちゃんとかわいらしく,ドヴォルスキーは実際に若くて30歳になる直前だった。

 最後の演目『セビリャの理髪師』は翌日20日だった。よりによってロッシーニをあの巨大なNHKホールというので行くまでは気が重かったが,始まってみると,芝居と舞台装置(演出はポネル)が見事だったし,音楽(指揮はアッバード)も軽やかでしかも豊かな響きに不足はなく,事前の心配を忘れてしまった。
 スカラ座のそれまでの3演目はこのときが初めてだったが,『セビリャの理髪師』はその1年半前のベルリン州立歌劇場(当時東ベルリン)公演(ルート・ベルクハウス演出)で見たことがあったので,気持ちに少し余裕があった。まったくタイプの違う演出で見るという体験も新鮮だった。
 きわめてリアルに作られたセビリャの街が,特設の回り舞台に乗っていた。後で聞いたところでは,この舞台は人力で回すのだという。その上で歌い,走るのがレオ・ヌッチ(フィガロ;当時39歳),アライサ(伯爵;31歳),そしてルチア・ヴァレンティーニ=テッラーニ(ロジーナ;35歳)といった面々だったが,特に圧倒的だったのはヴァレンティーニ=テッラーニで,メゾらしい落ち着いた声だが,ソプラノの音域をほぼカバーし,アジリタは軽やかで,ロッシーニの主役のメゾソプラノというのはこういうものだと知らされた。顔が怖いのが玉にきず(と言いつつその10年後に美人役チェネレントラを見ることになる)。
          (81年スカラ座の項終わり)

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Comments

 たしかこのときは、カレーラスが病気で倒れなければ、彼のはずでしたね。
 私は、ドヴォルスキーの声に波長があわず、せっかくの
クライバーを堪能できませんでした。悔しい思い出です。

Posted by: リンデ | Nov 19, 2009 at 11:16 AM

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