« 音楽ミステリー2冊――『シューマンの指』『おやすみラフマニノフ』 | Main | わがディスプレイ史 »

Feb 13, 2011

ノンフィクション2冊――『反音楽史』『嬉遊曲,鳴りやまず』

 12月から1月にかけて,何年も前に買ったきり読まずにいたノンフィクション2冊,石井 宏『反音楽史――さらば,ベートーヴェン』,中丸美繪『嬉遊曲,鳴りやまず――齋藤秀雄の生涯』(共に新潮文庫)を読んだ。正確には,『反音楽史』は前に単行本で買ったのに読んでいなくて,このたび,去年秋に出た文庫本で読んだのだった。
 『反音楽史――さらば,ベートーヴェン』は,ドイツ人が19世紀後半から20世紀初めにかけて作り上げ,それを輸入した「西洋音楽史」に異を唱えたもの。音楽への関心の中心がオペラになって久しい者にとっては非常にまっとうと思える主張で,特に意外な話ではないが,存命中まったく無名だったバッハの生活の様子や,モーツァルトが神童としては名を上げたが作曲家としてはそれほどでもなかったことなどが具体的に語られていて,おもしろい。
 著者によると,ドイツ中心の音楽史観の「創始者」はシューマンだという。前掲の『シューマンの指』を読んだ直後だったので,そのあたりの経緯が特に印象に残った。

 『嬉遊曲,鳴りやまず――齋藤秀雄の生涯』は,副題にあるように,サイトウキネン・オーケストラ(ただし,改名予定だとのこと)に名を残す音楽教育者・チェリストの斎藤秀雄(1902-1974)の生涯を綴ったもので,500ページを超える大冊。直接接するのはうっとうしそうで,できればつきあいたくないと思わせる斎藤だが,物語としてはおもしろい。
 著者はソプラノの中丸三千繪のお姉さん。話の運びがいまひとつぎこちないのが残念だが,特に戦前の部分は波瀾万丈でどんどん読めた。戦後は教育者として一筋に突き進むので,やや単調になる。
 これを読んでちょっと自慢したくなったのは,この本の著者は斎藤に会ったことがないのに対し,私は,死の前年の斎藤にインタビューしたことがあるということである。この本によると当時すでに病気がかなり進行していたのだが,そのときは一応元気に話をしてくれた。聞いたのはどちらかというと,父上の英語学者・斎藤秀三郎のことが中心で,教育者として父の影響が大きかったことを語り,「音楽にもグラマーがある」と話を締めくくったのだった。

|

« 音楽ミステリー2冊――『シューマンの指』『おやすみラフマニノフ』 | Main | わがディスプレイ史 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23118/50856797

Listed below are links to weblogs that reference ノンフィクション2冊――『反音楽史』『嬉遊曲,鳴りやまず』:

« 音楽ミステリー2冊――『シューマンの指』『おやすみラフマニノフ』 | Main | わがディスプレイ史 »