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Sep 05, 2013

『量子革命』『文人悪食』

 7月のほぼ全部を使って,マンジット・クマール 著,青木薫 訳『量子革命――アインシュタインとボーア,偉大なる頭脳の激突』(新潮社)を読んだ。内容が難しいから,断片的な時間に読んですぐ中断するとわからなくなってしまうので,まとまった時間が30分以上あるときに限って読むというルールを自分に課したために,時間がかかった。
 こんな本に手を出したのは,毎年何冊が読んでいる宇宙論の本につながるものだからだが,名著『宇宙創成』『フェルマーの最終定理』の名訳者である青木薫氏が原著に惚れ込んで訳している(「訳者あとがき」による)ということが大きい。
 話題の中心は量子力学が成立する過程での激しい論争だが,それはしだいに哲学的な様相を帯びた論争になっていく。素人考えでまとめれば,極超ミクロの世界では,素粒子の運動は直接「見える」わけではなく,運動の何らかの痕跡を観察することになるが,その痕跡を残すことによって元の素粒子の運動が変わるから,痕跡を残さないときの運動は決して観察できない,というのが論争の片方の派の主張である。これがさらに進んで,物理現象は観察・測定方法を伴って初めて存在し,測定方法を伴わない「客観的」な現象というのは存在しない,と言っているらしい。うーん,そう言われても…。

 その少し前に,まったく毛色の違う嵐山光三郎『文人悪食』(新潮文庫)を読んだ。漱石,鷗外から檀一雄,三島由紀夫に至る37人の文人の「食」をたどった力作・労作で,同じ著者による『文人悪妻』の姉妹作である。これを読んで思ったのは,「文人」は世間の枠にははまらない奇行の人ぞろいであり,個人的お友達にはなりたくない,ということである。友人たちから借金をして刹那的に贅沢をするというのはほんの序の口で,意地汚く,どろどろ,ねとねと。
 それは,前にルーペルト・シェトレ 著,喜多尾道冬 訳『指揮台の神々――世紀の大指揮者列伝』(音楽之友社)を読んだときに,天才とはつきあいたくないと思ったのと同様である。

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Comments

文人悪食を読んでみたいナ
すかさず思いました。

壇ファンであったことを
急におもいだしました。

山の上ホテルも憧れでした
最近読んだ 林真理子著
『野心のすすめ』にも
山の上ホテルにこもり
小説を書きたかったとあり
私と一緒だぁ(笑)と


Posted by: 川上智子 | Sep 06, 2013 at 10:22 AM

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