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December 2013

Dec 31, 2013

ガブリエーリの饗宴

 なつかしいレコード『ガブリエーリの饗宴』のCDが再発売されてわずか1200円で売られているのを見つけ,飛びついて買った。クリーブランド管弦楽団,フィラデルフィア管弦楽団,シカゴ交響楽団の各金管楽器群が,ジョヴァンニ・ガブリエーリ(1553-1612)の音楽を歌い交わす壮麗な曲集である。1968年にフィラデルフィアで録音された。
 日本での発売は翌年ぐらいだったと思う。ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂で2群または3群に分かれて演奏するために作られたガブリエーリの音楽はまったく知らなかったし,金管の合奏というもの自体ほとんど接したことがなく,当時このレコードの衝撃は大きかった。それは米国でもだいたい同様だったとみえて,今回のCDのリーフレットには,このレコードがひとつのきっかけになって後にニューヨーク・フィルのメンバーになったという人の証言や,演奏者にとってもすべてが初体験だったという回想が載っている。

 古楽器による演奏が盛んになるのはそれよりだいぶ後であり,それも当初はバロックとモーツァルトが中心だった。それより200年前のガブリエーリの時代,実際には今の金管楽器とはまったく違う音だったはずである。だが,当時の人にとってはこのレコードのように画期的な響きだったのだろう,というようなことも想像された。なお,「ピアノとフォルテのソナタ」は,「史上初めて楽譜にピアノとフォルテを指示した」曲だという。
 リーフレットには,曲ごとの演奏メンバーと配置(左・中央・右)が書かれている(これは昔のLPのライナーノーツにはなかった)。メンバーは全部で19名で,同時に演奏するのは最小8名,最大17名。所属オケごとのグループで演奏しているが,最後の「ソナーレのためのカンツォーナ第2番」だけは3つのオケのメンバーが混じり合って演奏している。
 今日はこれをもう一度聞いて輝かしき聴き納めとしよう。

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Dec 21, 2013

今秋のオペラ

 新国立劇場の2013-14シーズンが10月の『リゴレット』で始まり,『フィガロの結婚』『ホフマン物語』の再演と続いて,年内の上演が終わった。このうち,『リゴレット』は新製作で,音楽はなかなかの充実ぶりだったが,現代に置き換えた舞台による演出は,舞台自体は悪いと思わなかったが,過剰な人の動きが目にうるさく,疲労感が残った。
 一方,『フィガロ』は同じ演出で4回目,『ホフマン物語』は3回目で,安心して見ていることができ,しかも新鮮さも失われていない――実は細かいことを忘れているためでもあるが。なお,前回2005年のホフマンは,今や押しも押されもしないワグナー歌手となったフロリアン・フォークトだった。このとき,一聴して「うん,これはローエングリンに向いている声だ」と見抜くような慧眼(慧耳というべきか)はもちろん持ち合わせていなかった。

 今年見た唯一の外来オペラは,初めてのトリノ王立歌劇場による『仮面舞踏会』(12月)である。抽象的でやや大がかりな舞台上で,音楽は引きしまったリズムで進んだ。合唱・オーケストラも水準が高く,主張すべきところでしっかり前に出てくる。ピットの中がかなり見える席だったのでオペラグラスで観察したところ,チューバではなくチンバッソを使っていた。

 メト・ライブビューイングは,今年前半に8本も見たが,秋からのシーズンはまだ見ていない。見た演目の中では,『リゴレット』『トロイアの人々』『ジュリオ・チェーザレ』が印象に残った。

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Dec 15, 2013

冬本番――柚子・ネギ・鶏

 宮中では正月に「講書始」があるが,私はこのほどコート始めの儀を執り行った。近年薄くて暖かい下着を使っているので,以前より厚手のコートを着る期間が短くなった。しかし,高校のころはコートを着るのは1月から3月と決まっていたので,高校卒業後もしばらくは12月にコートを着ると軟弱と批難されそうな気がしていた。

 コートの季節は鍋物の季節である。先日はコート始めより先に湯豆腐を食べた。埼玉県某所の人の庭になった柚子を入れたところ,しみじみ美味。そこに入れたネギも埼玉県産だった。

 ときどき話をするチキン業界の人によると,12月は一年でいちばんの繁忙期で,「クリスマスじゃなくて苦シミマス」だという。

 ときどき行く池袋の居酒屋Tは,焼鳥・焼きとんが1本120円で大ぶりで買い得である。ここのネギ間は,ネギが両端にあって,間に鶏肉が通常3切れ挟まっている。つまり,ネギ間でなく「ネギ端」だ。

 ときどき注文する焼き鳥の定番のひとつは「つくね」。この語は,スマホに入っている国語辞典によれば,「捏(つく)ねる」からきているという。「捏」という字はほとんど「捏造」という語でしかお目にかからないが,元々「こねる」という意味。ただし,捏造は本来は「でつぞう」と読むそうだ。「ねつぞう」という読みは捏造されたもの?

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Dec 07, 2013

今年の喪中はがき

 毎年この季節になると,喪中はがきが届く。その多くは友人・知人またはその配偶者の親が亡くなったことによるものである。しかし,今シーズン最初に届いた喪中はがきは,池袋の居酒屋での「飲み友だち」T氏の死去の知らせだった。差出人はご子息だった。享年98。なにぶん親より上の高齢なので,年賀状を受け取ってほっとするのが毎年のことだったのだが,それも今年の正月がついに最後になった。喪中はがきが来たのは,年賀状のリストがきちんと残してあったからだろうと思う。
 最後に会ったのは5年近く前の2009年1月で,当時93だったはずだが,昔と変わらず(といっても知り合ったときT氏はすでに80過ぎだったのだが)ビールを飲んだ。(その時のことは「over 90 の飲み友だち」参照。また「萩原葉子氏――梅ヶ丘にて」も参照)

 T氏は山口県生まれで,国策会社のエンジニアだった。T氏の話で今も印象に残っているのは,1940年,会社に入ってまだ間もなかったときの満州出張である。神戸から満州航路の船に乗り,途中門司に寄って,着いたのは旅順,そのあと奉天(今の瀋陽)へ行き,奉天からハルピンまでは満鉄の看板列車「あじあ号」に乗った。あちこちで仕事の関係者からの歓迎を受け,そこで覚えたのがビールの味。それが池袋の居酒屋でのビールにつながってくる。ハルピンではロシア娘とダンスをしたという。
 もうひとつ,これも「鉄」話だが,戦前,山口県を走る美祢線に乗ったとき,もちろん蒸機だったのだが,燃料が悪いのか力が出ず,急坂では乗客はみな降りて,男たちが車掌といっしょに列車を後ろから押したのだという。どの程度の編成かわからないが,人が押して少しは役に立ったのだろうか。

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