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Apr 14, 2014

容疑者・社長・先生――敬称と肩書

 テレビやラジオのニュースで,逮捕された人などについては昔はみな呼び捨てだった。しかし,有罪が決まっていないのに呼び捨てにするのはおかしいということで,「○○容疑者」という呼称が使われるようになった。それは昼にラジオのニュースをときどき聞いていた70年代の終わりごろだと思っていたが,ネット上の資料によると1984年のことらしい(NHKの場合)。最初は,「○○容疑者」なんて言うとよけい露骨じゃないか,などと思ったりした。

 ふつう「敬称」というのは,「さん」「様」「殿」のように,単独で使われることはなくもっぱら名前のあとにつけるものを指す。「容疑者」「被告」「死刑囚」などはもちろん敬称ではない。
 名前のあとに「社長」「部長」「教授」「博士」などをつけることはよくあるが,これらは地位・資格を示す「肩書」であって,本来は敬称とは違う。人の属性を示すという点では「容疑者」に近いものだと思うが,敬称の代用として便利である。逆にちゃんとした肩書のある人を「さん」で呼ぶのは,まったく私的な場面以外では失礼になることが多く,敬語以上の敬語でもある。またこの類は「部長!」「博士!」などと単独で呼びかけに使える点も「容疑者」とは異なる。(かつては盛り場では「社長!,社長!」と呼びかける客引きがたくさんいた。)
 ただし「先生」は用法が広く,医師・教諭・教授など教職・研究職にある人への敬称であると同時に,「先生!」という呼びかけにも,また「先生のお考えはどうですか」など人称代名詞代わりにも使われる。非常に便利でしかも安全に使える敬称なのでその対象は広がった。国会議員にも使われるようになって「先生と呼ばれるほどのバカでなし」などと皮肉られたりもした。
 肩書は組織の変更と共に新しいものが生まれる。今年新しく知ったのは「ユニットリーダー」だった。

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