書籍・雑誌

Mar 08, 2008

ジョン・カルショーの自伝

 デッカのレコード・プロデューサーだったジョン・カルショーの自伝『レコードはまっすぐに』(山崎浩太郎訳;学研)をようやく読み終えた。昨年12月に同じ著者の『ニーベルングの指輪――リング・リザウンディング』(学研)を読んだあとすぐに入手し,12月に「来週あたり集中的に読むようにしよう」などと書いた(→参照)が,はっきり言って前著ほどおもしろくなくて,読むのに思わぬ時間がかかってしまった。
 自伝のつもりだから,デッカ入社前のことが長い。戦勝国イギリスの軍隊にも多くの不合理・不条理があったことを知ったのはまあ有益だったが,物語としてはおもしろくない。しかも未完となったので,まとまりは悪いし,データの誤りもある(訳注でいろいろ指摘がある)。

 前著のようなひとつのテーマによるものではないので,少なくともレコーディングに関しては「指輪以外」の落ち穂拾いである。それでも,その中のエピソードには,カラヤン,デル・モナコ関係のものなど,印象に残るものが多い。ジュゼッペ・ディ・ステファノも何度も登場するので,先日の訃報を目にしたときに,知人が亡くなったような気がした。

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Dec 20, 2007

死のアリアによる変奏曲

 ミステリーをあまり多く読んでいるわけではないが,クラシック系の音楽家・音楽界が出てくるものでおもしろかったものに,ポール・マイヤーズ(Paul Myers)の2冊

  『死の変奏曲』創元推理文庫 1989
  『死のアリア』創元推理文庫 1990

がある。イギリス情報部から足を洗って音楽マネージャーとなったマーク・ホランドを主人公とするシリーズである。ミステリーとしては,前に書いたトマス・ハウザー『死のシンフォニー』より正統的で,すぐれたエスピオナージュである。登場する音楽家の行動や発言が実にリアルで,生き生きしていると思ったら,それもそのはず,訳者の解説によると,作者はかなり高名なレコード・プロデューサーだという。
 いま手元に『死の変奏曲』の方がなくて確認できないが,この本の解説を書いていたのが,推理小説作家の息子でかつ音楽評論家というまさに「適役」のYR氏だったと思う。

 このシリーズは,90年当時,すでに5点が出ていたとのことだが,翻訳が出たのは上記の2冊だけのようである。

(参考情報:音楽ミステリーのかなり完備したリストはここ

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Dec 07, 2007

ショルティの『指輪』とジョン・カルショーの手記

 ショルティ指揮,ウィーン・フィルによる『ニーベルングの指輪』の録音(1958-65)のプロデューサー,ジョン・カルショーの手記『ニーベルングの指輪――リング・リザウンディング』(学研)を,寸暇を惜しんで読んだ。読むのを中断するのが惜しくて,最後はJR東京近郊区間の「大回り乗車」をして電車内で読んだ。
 同じ本の翻訳は,昔,音楽之友社から出ていたが,今回のはそれとは別の訳である(旧訳の訳者が序文を書いているのもおもしろい)。旧訳は長いこと絶版になっていて,何度か神保町の古賀書店(音楽書専門の古書店)で聞いてみたが,手に入らなかった。
 録音開始のときカルショーは34歳,準備を始めたときは30そこそこだった。この大プロジェクトを,こんな「若僧」にやらせてしまうデッカの太っ腹は見事というほかはない。ただ,『指輪』全部を録音するかどうかは最初はまったくわからなかったようだが。

 録音は1958年の『ラインの黄金』で始まった。戦後のウィーン国立歌劇場は,それまで『指輪』は仮小屋での『ワルキューレ』以外はやったことがなくて,ウィーンフィルの戦後のメンバーはこの録音が『ラインの黄金』初体験だったというのを初めて知った。考えてみれば,戦後劇場を再開したのがその3年前の1955年だったから,それも当然なのだが(戦後初めての『指輪』はその直後に始まったカラヤンによるものだとのこと)。

 日本でこのLPがセットで出たのは1968年だった。そのころの私はワグナーはいくつかの序曲・前奏曲以外何も知らなかったが,この豪華なセットが大きな話題になったのはかろうじて覚えている。たしか定価は45,000円,当時の初任給を大きく上回る額で,学生が買うなど考えられなかった。
 私が買ったのは,70年代後半に定価30,000円で発売になったときである。「ライトモチーフ集」3枚がついて,だぶん22枚組だった。解説書(歌詞対訳入り)の厚さは1cm以上もあり,友人と「これはリブレットじゃなくてリブロだね」などという話をした。
 その後,前世紀末ごろに輸入盤CDで買い直したときは2万円ぐらいだった。感覚的には,最初のLPの10分の1以下の価格である。
 今や『指輪』全曲の録音は十何種類もあるが,この最初のものが今も「現役」であり,しかもしばしば最良のものとされているのは,草葉の陰のカルショーも誇らしく思っていることだろう。

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Sep 29, 2006

3か月持ち歩いた文庫本

 6月下旬から3か月かかって,1冊の文庫本が終わった。本の端(小口)は手あかで汚れ,書店でかけてもらったカバーはすり切れそうになり,ページの間には消しゴムのかすが挟まっている。

 それは数独(別名ナンバープレース)――9×9のマス目の各行・各列,およびそれを区切った3×3の9ブロックすべてにおいて,1~9の数字を重複しないように入れるパズル――の本である。数字を扱っているが,計算をするわけではなく,並べるだけである。(だから本当は数字である必然性はなく,A~Iでも,い~りでも,9種の記号であればよい。)
 「読み終えた」のではなく「やり終えた」その本の構成は,

超初級編  10問      初級編   20問
中級編   30問      上級編   40問
プロ級編  30問      超プロ級編 10問

となっていて,中級編までは一部省略したが,上級編以降は全部解いた。

 かなりの期間を要したのは,主に電車の中で取り組んだからだった。通勤時間が(東京にしては)比較的短いので,時間が小間切れになり,効率が悪かった。ただし,数字をひとつ仮定した上で先に進むというテクニック(上記の区分でいうとプロ級編以降で必要になる)を使う場合,消しゴムでたくさん消してやり直したりすることになるので,電車の中ではやりにくく,終盤は家や会社の机の上でもやることになった。

 数独の本は山のようにあるので,次はどんな本にしようかと思案中。他の読書もしたいので,少し休んでからということになるだろう。

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Mar 02, 2006

『Asahiパソコン』休刊

 いつものように,駅の売店で『Asahiパソコン』を買った。これまでとまったく違う赤1色の表紙で,春の模様替えだと思ったのだが,見ると真ん中に「終了しますが,本当によろしいですか」というダイアログ・ボックスがあり,「はい(Y)」「いいえ(N)」というボタンがある。なんだか様子がおかしいなと思いながら中を開けると,扉ページになんと休刊のあいさつがあった。
 休刊の予告は実は前々号(つまり1か月前)に出ていたのだが,うかつにも気づかなかった。朝日新聞にも出たらしい。

 創刊は1988年11月だから約17年半前である。私が初めてパソコン(NECの98note)を買ったのが91年暮れで,この雑誌はたぶんそのころ買い始めたから,14年以上読んでいたことになる。
 毎号買っていたのは,まあ惰性でということもあるが,理由を挙げるなら,薄くて軽いこと,月2回刊で情報の鮮度がいいこと,初心者向け・中級者向けの内容のバランスがよいこと。そして振り返ってみると,いちばん重要なのは,オジサンにも抵抗がない比較的落ち着いた言葉遣い・レイアウトだった。

 終刊号では,パソコンについての情報はまさにパソコンによってネットから得られる状況で,パソコンを扱う雑誌というものの限界が語られている。
 しかし,情報の垂れ流しでなく,時間というフィルターと編集という過程を経て届けられる雑誌という形態は,存在意義を失っていないと思うのだが。

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Sep 17, 2004

訂正:ハンガリー → ブダペスト

 4日のエントリー「徳永康元 ブダペスト三部作」で,肝心の新刊の書名を間違えてしまったことに気づいた。『ハンガリー日記』ではなく,正しくは『ブダペスト日記』である。(9月17日修正済み)
 お詫びの印に,あらためて書誌情報を記しておく。

 徳永康元 『ブダペスト日記』
   四六判 320pp. 
   ISBN4-88008-314-3
   本体価格 2500円
   発行:新宿書房

   Amazon.com でのありかはこちら

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Sep 04, 2004

徳永康元 ブダペスト三部作

 今日は,畏友Flamand氏の「擬藤岡屋日記」の読者の方には特に興味を抱いていただけそうな話題を――

 言語学者・徳永康元先生(1912-2003)の『ブダペスト日記』(新宿書房)が,逝去の後1年半たって8月に刊行された。『ブダペストの古本屋』『ブダペスト回想』(共に,恒文社)に続く3冊目の著書である。
 徳永先生は,戦前の教養人の系譜の掉尾を飾る人で,音楽家ではないが,音楽に深い理解を持つ。作曲家・柴田南雄のいとこであり,シェーンベルクを初めとする20世紀の音楽を柴田に紹介したのは徳永先生だったという。

 徳永先生は,1940年2月から1942年5月までハンガリーのブダペストに留学し,音楽会にも通った。上記『ブダペストの古本屋』によると,実演を聞いた音楽家は,指揮者ではリヒャルト・シュトラウス,フランツ・レハール,エルネー・ドホナーニ(クリストフの祖父),ピアニストではエミール・ザウアー,バルトーク夫妻,ギーゼキング,エドウィン・フィッシャー,バックハウス,歌手ではネーメト(ソプラノ),セーケイ(バス),さらに当時の「若い世代」の指揮者フェレンチェク,ヴァイオリンのヴェーグなど,ため息の出るような名前が並ぶ。「擬藤岡屋日記」でおなじみのタナカ・ミチコも登場する。
 この中で,バルトーク夫妻の演奏会は,ナチスの圧力が強まっていた中でハンガリーへの告別演奏会となり,その数日後出国して,再び故国の土を踏むことはなかった。

 『ブダペストの古本屋』『ブダペスト回想』の2冊は1980年代の本だが,ネットで探せば手に入ると思う。著者が再びハンガリーを訪れることができたのは1965年,この時の感動が,この2冊のもうひとつのハイライトである。
  <9月17日修正>

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May 04, 2004

オペラと歌劇の雑誌

 昔,オペラに凝り始めた友人が,本屋で『歌劇』という雑誌を見つけ,「あ,日本にもこんな雑誌があるのか」と感激しつつ手に取ったが,開いてみるとなんだか様子が変で…,ということがあったという。
 知らない人も(特に男は)多いと思うが,『歌劇』は宝塚歌劇団の雑誌であり,1936年創刊という日本の雑誌として屈指の長い歴史を持つ。これより新しい,といっても1952年第3種認可の『宝塚GRAPH』と共に,宝塚歌劇団監修・著作のオフィシャルな月刊誌が2誌もあり,根強い読者に支えられている。

 数年前まで私はよく知らなかったのだが,宝塚歌劇は,日本で唯一,専用の劇場と練習場,専属の歌手・オーケストラおよびスタッフ,歌手養成施設を持っている「完全なオペラハウス」であり,宝塚(ファンは宝塚の劇場を「ムラ」という;2527席)と東京(2069席)の2つの大劇場で同時に,週に通常10回(!)公演している(水曜は休演なので,1日2回公演の日が週4日ある;演目の変わり目には各数日休みがある)。もちろん,オペラ歌手と違ってマイクを使っているから,毎回同じ人の出演が可能なのだが。
 さらに宝塚バウホール(500席)と東京の他の会場(主に日本青年館)での公演,全国ツアー公演があって,5つの組が交代で出演している。しかも,驚くべきことに,そのすべての公演がほとんど満席になるらしい。(当然,一人が同じ演目を何度も見ている。)

 ところで,70年代の終わりごろだったように思うが,パソコンのソフトや書籍の会社として急成長していたアスキーが,『オペラハウス』という雑誌を出す計画をし,その試作号を配布してモニターの意見を募ったことがあった。
 こちらは本当にオペラの雑誌で,日本と海外の公演評や予定,レコード(当時はもちろんLP)の案内,歌手や演出家へのインタビューなど,ひととおりの要素を盛り込むことにしていたようだ。私は何とかちゃんと出発してほしいと思い,友人にも呼びかけてアンケートに協力したのだが,何か月かして「諸般の事情で刊行を断念します」というハガキが来た。
 インターネットでいくらでも情報が飛び交うことになるとは夢にも思わなかった時代だった。

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Apr 01, 2004

Noise & Virus

 英国BBCのエイプリルフール・ニュースというのは今もあるのだろうか。もうだいぶ前のことだが,4月1日にBBCが「イタリアでは今年はスパゲッティが豊作で…」という具合に「スパゲッティの収穫風景」のニュースを流し,信じた視聴者から「どこでとれるのか」「どうやって栽培するのか」といった問い合わせが殺到したという。
 日本のテレビではここまで手の込んだうそニュースはやりそうもないが,かつて『東京新聞』(たぶん親会社の『中日新聞』も同じ)では,見開きの特報面に「きんさん・ぎんさんは実は三つ子で,妹のどうさんを移住先の南米で発見した」という記事を載せたことがあった。古ぼけた写真もあって,なかなかうまくできていた。
 ほかに『Asahi パソコン』では,通常の「News & Views」というニュース記事のタイトルを「Noise & Virus」と変更してうそニュース記事を載せるということを,数年にわたってしていた。そこに載った新製品の記事の中には,後に「バウリンガル」とか「電子ペーパー」のような形で実現に近づいたものもあったように記憶する。

 ここ数日,スパムメールがまた増えた。それ以前の4割増である。
 ありがたいことに,快刀POPFile(参照先:http://popfile.sourceforge.net/)が乱麻を断ってくれているが,ウイルスつきも多く,不気味だ。

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