ことば

May 04, 2012

車・航空機の英語,車・野球の外来語

 車に関する言葉は,英語では基本的に馬車に由来する。drive driver に始まって,fender wagon chassis,さらに bus taxi coach coupé に至るまで,「馬車用語」が転用されたものである。他の西欧語でも同様だろう。
 漢字では,「駐」「駆」などにウマのおもかげがある。ただし,「駐」は現代中国語では使用頻度が低い文字らしい。

 同様に,英語の航空機関係の言葉は基本的に船に由来する。pilot aboard board cabin charter など,みな元は船について用いられてきた語の転用である。airport airline のように,air をつけたものを加えれば,その数はさらに増える。

 馬車の伝統が大きく違う日本では,車の用語は車と共に英語から入ってきた外来語が主だが,「ハンドル」「バックミラー」など古くから用いられている言葉は,結果としていわゆる「和製英語」(そのまま英語の綴りにしてもあまり通じない)が多い。
 これは,「フォアボール」「デッドボール」「バックネット」といった野球の用語も同様である。ただし,車にしても野球にしても,「ホイールベース」「クローザー」といった新しい用語は「和製英語率」が低い。

 Jリーグ発足のときの施策だと思うが,サッカーでは,「アウェイ」「サテライト」など,なるべく野球と違う言葉を使おうとしているようだ。

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May 03, 2012

『サロメ』の新訳

 オスカー・ワイルドの『サロメ』の平野啓一郎による新訳が4月に出た(→参照)。以前「カラキョー」で話題になった光文社古典新訳文庫の最新刊である。ご承知のように短い作品なので,戯曲本体より付録部分の方が大きく,ページ数は以下のようになっている。

  本体 75 [献辞等を含む]
  注(田中祐介)  39
  訳者あとがき 28
  解説(田中祐介) 60 [書誌を含む]
  『サロメ』によせて(宮本亜門) 12
  ワイルド年譜 4

 宮本亜門が登場しているのは,新国立劇場での上演(オペラではない)のために平野に新訳を依頼したのが宮本だからである(宮本演出の『サロメ』上演は5月31日~6月17日;→参照 いきなり音が出るので注意!)。
 サロメのせりふは,過度にイマ風にしているわけではないが,現代の15歳ぐらいの女の子がしゃべるとしたらこんな感じだろうという口調になっている。それだけに,ヨカナーンへの妄想が広がっていく過程が直接的に感じられ,恐ろしい。「解説」も渾身の作というべきもので,資料としても貴重である。

 オペラの原作となった古典的戯曲の新訳としては,先ごろ,ボーマルシェの『フィガロの結婚』(鈴木康司 訳,大修館書店)が出た(→紹介)。現代の日本語上演が可能な訳を目指したものだが,こちらは原作がやたらと分量が多く,『サロメ』より字詰めの多い組版で本体は224ページある。日本語で上演したら正味4時間では終わらないのではないだろうか。

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Apr 10, 2012

特別な動詞

 中学1年のころ英語について不思議に思ったのは,have という動詞がなぜ「have動詞」と名付けられて特別扱いされるのだろう,ということだった。be は「存在」という根源的なものを表すし,do はすべての動作の元締めだから,これが特別なものであることは当然だが,「持つ」という語がなぜ?――と整理して考えたわけではないけれど,不思議な感じはぬぐえなかった。
 後で完了形などを習うと助動詞としてのhaveが登場し,助動詞のbeやdoと並ぶ「活躍」をするので,確かに特別な語だと知ることになる。さらに,インド=ヨーロッパ語族の多くの言語にとって,haveのご先祖様は特別な存在なのだった。
 しかし,少なくとも英語の「持つ」という意味の動詞haveだけだと,さほど特別な存在とは言えない,と今でも思う。「弟が1人いる」「タコは足が8本ある」など「持つ」よりはずっと多彩な使い方があるとはいうものの,それは他の基本語にもあることである。三人称単数現在形がhavesでなくhasであることは「特別」なことだが。

 もうひとつ,中学1年ではなかったと思うが,ready という語が「用意ができている」という意味だと知って,こんな短いひとつの語がなぜこんな「長い」訳になるのだろうと思った。

 ところで,日本語の「持っている」がちょっと特殊な意味で使われるようになったのは,いつごろからだろう。きっかけは石川遼か,斎藤佑樹だったか。

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Feb 25, 2012

パスとアベック

 2月になって,近所のタコ焼き屋の店頭に

  受験生がんばれ!  オクトパスで試験にパス

という看板が出た。これを機会に octopus という単語を覚えた人がいたとすれば,幸いなるかな。

 「パス」で思い出したが,鉄道・バスの定期券のことを昔は「パス」と言っていた。私の小学生のころにはもう古風な言葉になっていたような気がする。
 カタカナ語は,全体としては増える一方だが,このように廃れていくものも少しはある。かつてのおじさん用語「ワイフ」というのもそのひとつだ。

 「アベック」というのも廃れたというほどではないが,昔ほどの使用頻度はない。一部は「カップル」などに取って代わられたが,場面によっては単純な代替ができず,「ツーショット」「ロマンスシート」などいろいろな言い方が動員される。そんな中で,「アベック・ホームラン」は,スポーツ新聞用語としてけっこう根強いようだ。(ただし,これは昔は,もっぱら長島・王について用いられていた。)
 「アベック」は,フランス語の前置詞を原語とするという点でも特異なカタカナ語である。

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Feb 04, 2012

豆まき・春まき

 節分を前に,スーパーでは恵方巻キャンペーンが行われていた。元々どこでどの程度行われていた風習だか知らないが,スーパーの年中行事になったのは十数年前からという感じがする。
 近くのスーパーでは,その音楽として童謡「まめまき」が使われていた。ただしメロディだけで,歌はない。最初の「鬼は外,福は内」と最後の「鬼はこっそり逃げていく」は歌詞を思い出したが,その間の部分がなかなか思い出せなかった。「うれしいひな祭り」などに比べると知名度はぐっと落ちる曲なので,同居人も知らないという。思い出したのは節分の直前だった。(正解は →参照

 節分の翌日は立春(→参照)。いつも「春は名のみ」だが,今年はひときわ寒い。
 英語で中華料理の「春巻」のことを,中国語からの直訳で spring roll という(ほかに,egg roll,pancake roll という言い方もある)。米語の辞典には,この語は1947年から使われていると書いてある。
 2年前ぐらいに知ったのだが,今は summer roll という言葉も使われる。見た限りでは,こちらはまだ紙の辞典には載っていない。ベトナム料理の「生春巻」のことである。揚げていないし,見た目も涼しげで夏向きなので,言い得て妙。

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Jan 21, 2012

寿司と駆け込み乗車

寿司は上を食え
 「寿司は上を食え」という教え(?)を昔友人から聞いた。並と上の価格差がたとえば千円以下ぐらいだと,並と差をつけて上らしい内容・体裁にするのはけっこう難しいので,値段の差以上にコストをかけることになり,上の方がコストパフォーマンスが良い,というような理屈だった。実際には値段が2段階のみということは少ないので事はそう単純ではないが,迷ったときの指針になる。
 鰻重の場合は,ランクの違いは「結局は鰻の分量の差なんですよ」とある鰻屋の人が言っていた。鰻のランクは,並・上・特上などのほか,松・竹・梅などで示されることが多いと思うが,居酒屋兼鰻屋では,蒲焼が800円・1000円・1200円・1500円とあるがランク名がなく,「蒲焼き,1000円の」などと言って注文する。日本の店としては珍しいロコツさである。

駆け込むなら中まで
 電車への駆け込み乗車は,さすがにこの年になるとあまりしないが,階段を降りて目の前の電車発車間近だったりすると,小走りになることがある。そんなとき困るのは,前を走る人が,車内に入ったところで安心して止まってしまうことである。後に続く者はドアの直前で急停止しなければならないが,間に合わず追突することもあり,結果的に余分に時間がかかる。エレベーターへ駆け込むときにも同様のことが起きる。
 そこで,標語を提案――「駆け込むなら中まで!」

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Dec 31, 2011

旅先で聞いた訃報

 1975年6月,初めて日本を出て,ロンドンで最初の夜を迎えた。簡素なホテルで,設備と言えばベッドに作り付けになっているラジオぐらいだった。そのラジオをつけ,BBC1というダイヤルに合わせたら,ニュースをやっている。そこで聞いたのが,日本の前の首相で,Nobel Prize 受賞者の Eisaku Sato が死去した,というニュースだった。
 ニュース自体にはさしたる感慨もなかったが,とりあえず内容がわかったことはうれしかった。

 10年以上前の1月だった,と思って調べてみたら1996年のこと,仕事で鹿児島に出かけた。一仕事終わって,夜は地元の関係者に連れられて飲みに行った。鹿児島で「飲む」といえば当然焼酎である。カウンターで,芋焼酎の濃いお湯割りが注がれた。
 関係者氏はやがてカウンター内のマスターや周囲の顔なじみの客と話を始めた。もちろん,地元の人同士はこてこての鹿児島弁で,ほとんど何もわからない。知らない音楽のように聞いていたが,どうやらだれか有名人が死んだという話をしているらしい,ということがだんだんわかってきた。テーマになっている人の名前は「旧情報」になってしまって出てこないが,元相方の「きよし」という名が出てきてやっとわかった。死んだのは横山やすしだった。
 今でも,たまに横山やすし・西川きよしの話題になると,鹿児島の居酒屋のカウンターを思い出す。
   (→参照

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Dec 26, 2011

ベークドで御座います

 パソコン,ワープロが,というよりかな漢字変換のシステムが,漢字の使用率を上げた。もともと,読める漢字と書ける漢字の数の間には大きな開きがあったのだが,この差が小さくなって,漢字の多い文章を書く人が増えた。
 必然性があってのことならいいのだが,かなで書くのが普通の大和言葉に漢字を使うのは意味がないし,字面がきたなくなる。「御詫び」「然し」「宜しく」に始まって,「致します」「頂きたい」「御座います」のような補助用言のたぐいにまで漢字を使うのは勘弁してほしい。

 初期のパソコンは,使える漢字はJIS第1水準のみというのが普通だった。それが,第2水準まで使えるようになって,たぶん90年代ぐらいから,「渡邉・渡邊」さん,「小澤」さんなどが増えた。手書きの時代から「團」「國弘」といった表記を使っている人はいたが,「邉・邊」「澤」については通常は「辺」「沢」と書いていた人の方がずっと多かったはずである。
 ちなみに,「辺」の異体字はJIS第2水準では上記の2種のみだが,実際には少なくとも20種,見解によっては60種以上あるとされている。

 少し別の話だが,やめてほしいと思うのはチーズケーキなどについて見かける「ベークド」という表記である。英語のth音のように日本語を書く文字ではs音と区別のしようがない場合と違って,-edの発音が有声音の場合と無声音の場合を書き分けることは一応できるのに,「ベークト」としないのはなんとも奇妙である。
 思い起こせば,かつてのパソコン用語「エンハンスド」あたりが,このことが気になった最初である。
 もちろん,今さら「タイガーズ」「ヤンキーズ」とせよとは言いませんが(これは有声・無声が逆ですね)。

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Aug 21, 2011

おまわりさん,…円からおあずかります,半濁音か清音か

 昔うちの子供が4歳ぐらいの時,街角に警官がいるのを見て,「あ,ヒトのおまわりさんだ」と叫び,おまわりさん本人にも聞こえてしまったということがあった。
 童謡の「犬のおまわりさん」って,ネコの迷子になぜイヌが出てくるんですかね。イヌという言葉にまつわる連想があるからかもしれないが,いろいろな動物の相手をするんだとしたらイヌもたいへんそう。

 「…円からおあずかりします」という言い方が定着して久しい。「…円おあずかりします」または「…円からいただきます」というべきだと今でも思うが,一方で,この「あずかる」を「もらう,いただく」の婉曲語だと考えれば理屈は通るという説明もある。
 会社近くの某和食店で,たぶん中国人の店員さんが「1000円からおあずかります」と言っていた。「し」1字足りないだけなんですけどね。だったら,「1000円あずかります」と言えばいいのに,と思ってしまう。

 先日,「M眼鏡舗」という店名を目にした。「がんきょうほ」って読むんですかね。
 それで思い出したのは,実家近くにあった「S印舗」というはんこ屋さんである。ある時期からその「印舗」という熟語の読み方が気になった。「印」は印鑑の「印」で,ほかに音読みはなさそうなのでいいとして,「舗」は店舗の「舗」,したがって「印舗」の読み方は…,というのは音韻として自然だし,理にかなった推理だと思ったが,国語辞典に出ていなかったし,誰かに尋ねるのもはばかられた。
 いまネット上の質疑応答などを見ると,「舗」は「ほ」と読むのがどうやら穏当なところらしい。でも,もしかなり昔からある言葉だとすれば,その連想される外来語が定着する前は「ぽ」と言っていたのでは,という想像もなりたちそうだ。

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Apr 23, 2011

火主水従のころ

 小学校のころ,というのは50年以上前だが,日本の発電は「水主火従」であるが,近い将来「火主水従」になる見込みと教わった。当時はたしか,水力が7,火力が3ぐらいだったと思う。
 故郷・横須賀でも久里浜で火力発電所の建設が始まり,それが年々増えて,完成時には当時世界最大の発電所となった。千葉の金谷港から東京湾フェリーに乗ると,久里浜が近づくにつれ,火力発電所の威容がよくわかる。
 しかし,その後,「水」と「火」の間に「原子」が割って入って話が複雑になり,「主」だの「従」だのという言い方はしなくなった。今までよく知らなかったが,横須賀火力発電所は2010年4月までにすべて「長期計画停止」になったとのこと。
 それが,このたびの電力不足対策のひとつとして,一部の運転を再開するという。郷土の生んだ往年の名選手の現役復帰を歓迎したい。

 話は飛ぶが,私のひげ剃りは長年「電主手従」だった。「手」は Schickの手動カミソリで,あごの骨の付け根のあたりなど,どうしても電気カミソリでは剃れない部分があって,そこだけ Schickを使っていた。
 それが,今年の1月に電気カミソリを十数年ぶりで買い換えたところ,ほぼ問題なく電気ですべて剃れるようになった。Schickの肌触りへのなつかしさはあるが,実際上「電全手0」となった。

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