美しき山々
先日の『モーゼとアロン』の作曲者シェーンベルクについては,「十二音音楽」というスローガンばかり先に知っていたが,長い間,聞く機会はめったになかった。オーケストラの演奏会では,むしろベルクやウェーベルンの方が時々は演奏されていて,オペラでもベルクの『ヴォツェック』には接する機会があった。
たぶん1976年~78年ごろだったと思うが,マウリツィオ・ポリーニのリサイタルを聞きに行った。メインプロはブーレーズのピアノ・ソナタ第2番だった。なんだかすさまじい響きで,しかも40分かかる大曲,技術的には超難曲だとのことで,圧倒されっぱなしでわけのわからなまま終わった。
その後でアンコールに演奏されたのがシェーンベルクの小品で,ブーレーズの後で聞くと,実にかわいらしく,美しく,ロマンチックにさえ聞こえた。
もっと前,学生時代に,おもしろいところがある,と先輩に連れて行かれたのが中野にあった古い名曲喫茶「クラシック」だった。ギシギシいう階段を上ると,店の中は叙情纏綿の弦楽の響きに包まれていた。だれの曲だろう。マーラーを知っていればマーラーかなと思っただろうが,当時マーラーはかろうじて「巨人」をちょっと知っているという程度だった。
終わって曲名が告げられた。シェーンベルクの「浄められた夜」の弦楽合奏版だった。


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