シューベルト晩年の長い曲
昔友人と,もうすぐシューベルトが死んだ年(31歳)になっちゃうな,という話をしたことがある。自分たちで演奏したことのある大作曲家でいちばん若くして死んだのはシューベルトだから,そこには少し感慨があった。「その次」はモーツァルト(37歳)だが,それはずっと先のことと思っていた。
27歳からの最後の4年間を「晩年」ということにすると,シューベルトの晩年の曲には「長い名曲」が多い。大ハ長調交響曲(「グレート」),八重奏曲(最初「八十箏曲」と出た),弦楽五重奏曲ハ長調,2曲のピアノ・トリオ,最後の3つのピアノ・ソナタなどである。いずれもLPの両面を費やしていた。「未完成」も,2つの楽章で25分以上かかるから,もし完成していれば大ハ長調と同様の大曲になったはずである(大ハ長調の終楽章は,2/4拍子とはいえ,1000小節以上もある)。
これらの曲に私が親しむようになったのは,大ハ長調を,ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏を聞き,また自分たちのオーケストラで演奏したのがひとつのきっかけだったが,ルービンシュタインらのピアノ・トリオ集,リヒテルの後期ピアノ・ソナタ集などのすぐれたレコードが,70年代半ばに次々に出たということもある。たまにゆっくりレコードを聴く時間ができると,こうした尽きぬ泉のようにあふれる長大な曲に身をひたした。
その前の時代には,シューベルトは曲を簡潔にまとめることができなくて,同じ旋律をなんども繰り返すのだ,といわれたこともあったという。しかし,後のブルックナーやマーラーを知った身には,シューベルトのこうした時間の流れ方はおなじみのものだった。大ハ長調の第2楽章のゲネラル・パウゼには,ブルックナーにつながるものを感じたりもした。
その後,モーツァルトの死んだ年はたちまちに越え,マーラー,そしてベートーヴェンの享年も過ぎてしまった。


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