新国立劇場の5-6月――『ナブッコ』『コジ・ファン・トゥッテ』
新国立劇場の5-6月は「読み替え演出月間」で,共に時代を現代に移した『ナブッコ』(新制作)と『コジ・ファン・トゥッテ』(2年ぶりの再演)が相次いで上演された。
読み替えが自然なのは圧倒的に『コジ』の方。2年前のプレミエのときも思ったのだが,もともと荒唐無稽な話ではあるけれど,2組のカップルと仕掛け人2人だけのドラマなので,どんな時代に持ってきてもそれなりの話にはなる。舞台はキャンプ場なので,軍隊に招集されるあたりがちょっと苦しいが,なんども見た『コジ』の中でも屈指の説得力だった。歌手たちがまったく普通の体型で自然に演技しているのも,その説得力に貢献した。
その点,個人でなく民族・宗教の対立が基本の『ナブッコ』は,どうも収まりが悪い。舞台はショッピングモール,開演前にすでに幕は上がっていて,舞台の真ん中にエスカレーター(ただし動かず,階段として使用される)がどーんとあり,客がうろうろしている。
開演してからも,いろいろなことが起きて目を離せない舞台だったが,人の動きを追うのに追われて疲れた。音楽はきわめて充実していたが,ヘブライ人の合唱は何をなつかしんでいたのかなど,対立の構図がどうもぴんとこない。
『ナブッコ』の休憩時のホワイエでは,『コジ』の出演者たちが並んで「客引き」をしていた。
メト・ライブビューイングで,舞台を1950年代のラスベガスに移した『リゴレット』のプレミエが3月に上映された。こちらは,権力者とその取り巻き,道化とその娘という関係は原曲通りなので,まったく違和感なく見た。
『コジ・ファン・トゥッテ』は,今回の上演で見た回数が15回となり,モーツァルトの4大オペラすべてが15回で同率首位に並んだ。スロットマシーンの大当たり状態というべきか。


Comments
いつも思うのは、初めて見るのが読み替えだとどうなのでしょうか?
Posted by: PO | Jun 19, 2013 10:40 AM
私も「ナブッコ」の合唱だけはどうも…
ほかは音楽の充実でどうでもよかったですが、
あの演出では、捨てたはずの物質文明を懐かしんで、「わが祖国よ」といってることになってしまいますよね。
演出家の文章も読みましたが、別に、多神教の国だからといって、娯楽のオペラの一神教を理解できないなんてことはないと思いました。
Posted by: リンデ | Jun 22, 2013 01:46 PM
メト・ライブビューイング『ジュリオ・チェーザレ』でコメントしたナタリー・デセイ出演の『椿姫ができるまで』を見ました。エクサンプロバンスのトラビアータのメーキングで、元の読み替えライブも以前YouTubeで全編見てます。ライブを見てないと分かりにくい所もありますが、今秋架かるようなのでご覧になってはどうでしょうか。最後のビオレッタ臨終の場面に取組むデセイの「完璧主義」も一見ものでしょう。
Posted by: PO | Jun 25, 2013 11:19 PM