新国立劇場『カルメン』/異例の法要
3月上旬某日,新国立劇場の『カルメン』を見た。演出家のアレックス・オリエは,2019年の『トゥーランドット』で最初に接した。最後の0.5秒で衝撃が走る舞台だった(→参照)。
オリエの今回の『カルメン』は2021年7月がプレミエだったのだが,当時はコロナのために,歌手同士が抱擁しないとか,合唱も離れて立つといった制約があり,オリエ自身も来日できないままの隔靴掻痒演出だった。今回は演出家が来日したとのことで,いわば第2のプレミエである。舞台上の場所は東京で,カルメンは来日中のロック・バンドの歌手,ドン・ホセは警備の警官という設定にはさほど無理がなく,もちろん歌詞は元のままなので多少のぎくしゃくはあるが,全体としては自然なものとして楽しんだ。
歌手はみな立派だった。タイトル・ロールは,サマンサ・ハンキーというボストン出身の長身の美人で,カルメン役のロール・デビューでかつ日本でのオペラ・デビューだとか。ただし,日本で歌うのが初めてというわけではなく,ボストンの児童合唱団の一員として20年前に来たというからおもしろい。
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3月10日は,東京大空襲から80年の日。ニュースで「慰霊の法要」が行われたと言っていたが,これは冗語と言うべきか迷う。なお,このとき,一瞬「異例の法要」かと思ってしまった。
やや「異例の法要」のニュースが伝えられたのは,翌11日だった。この日は東日本大震災から14年の日で,鎌倉の鶴岡八幡宮では,宗派をこえて東日本大震災の犠牲者を悼む「追悼復興祈願祭」が行われ,神道・仏教・キリスト教の宗教者が集まったという。震災の翌年から,3つの宗教の会場を持ち回りで行われているとのこと。
カトリックの司教の「他の宗教で大切にされている施設等は尊重すべきだ」という趣旨のことばを思い出した。